難測定核種の同位体分析

Ca-40の分析

コンクリート中のCa-40が中性子を吸収することでCa-41が生成される。原子力発電所の廃止措置において、その濃度測定が必要である

Ca-41は以下の理由から放射線計測が難しい
 ・寿命が長い
 ・崩壊によるエネルギーが低い

そこで、Ca-41を直接計数することが効果的である
 ・レーザーによりCaを(同位体)選択的に励起・イオン化し、生成イオンを測定する

Ca元素天然同位体比
41は極微量

多段階共鳴イオン化

実験装置

・3台のレーザーにより、右上図のようにCa原子を励起し、最終的にイオン化する
・これにより高効率、高選択的にイオン化可能
・その後、QMS(四重極質量分析装置)で質量電荷比に従って、イオンを分離する
・Detector(イオン検出器)でイオンを直接計数
・Ca同位体ごとにイオン数を測定できる

Ca原子励起イオン化スキーム

実験装置概略図

Ca-43レーザー分光・超微細構造

高分解能レーザーにより、
 ・同位体ごとの共鳴周波数の差である同位体シフト(原子核効果)
 ・超微細構造(核スピンによる効果)
も測定可能

Ca-40およびCa-43のイオン化スペクトル

$$ ΔE_F=Δ\nu_{IS}+\frac{A}{2}C+\frac{B}{4}・\displaystyle\frac{\left(\frac{3}{2}C(C+1)-2I(I+1)・J(J+1)\right)}{(2I-1)(2J-1)・IJ}$$

Casimir formula for hyperfine splitting

Ca-43の超微細構造


Sr-90の分析

同位体イオンの可視化計測手法の開発

長谷川研究室では、「共鳴イオン化」と「イオントラップ」手法を組み合わせて90Srを元素・同位体選別した、迅速かつ高感度な分析装置を開発しています。

東京電力福島第一発電所事故による放出された放射性核種のモニタリングは長期にわたり重要とされています。

ガンマ線放出核種(Cs、I 等)  

✔外部被曝  ✔放射線測定 (モニタリングが進んでいる)

・アルファ線(Pu 等)・ベータ線(90Sr 等)放出核種  

内部被曝  ✔専門的な測定技術・時間が必要 (特に、90Srのような純β線放出核種)

90Srの特徴(ベータ線放出核種)
✔Caと化学性類似のため骨に沈着 ✔90Sr物理半減期:29年
90Sr実効生物半減期:18年

以上の特徴により、長期に渡る内部被ばくの可能性が存在します。

90Srの評価は、既往の研究(フォールアウト)でのSr/Csを参照していますが、実測は少数であること、フォールアウトにおける評価は、放出源位置、時間経過をはじめ様々なパラメータが異なるという問題が生じます。

レーザー共鳴イオン源・質量分析・イオントラップ原理実証装置開発・製作

長谷川研究室では、画像の様なレーザー共鳴イオン源・質量分析・イオントラップ原理実証装置開発・製作を進めています。

装置に対応したジオメトリにより以下の様なスキームの解析を実現しています。
 ・原子蒸気を共鳴イオン化
 ・ディフレクタによりイオンを押し出す
 ・四重極質量分析器により質量分離
 ・スキマーと静電イオンレンズによりイオンを捕集
 ・イオントラップとキャップ電極によりイオン捕獲
 ・捕獲したイオンをレーザー冷却し、CCDで観測

イオン捕獲挙動の解析