燃料デブリは、福島第一原子力発電所を解体するうえで大きな問題になっています。燃料デブリには他の物質とは違い特殊な性質を多く持っています。
その中でも、
- 化学形が複雑で,組成の分からない複数の核種を含有している
- 少量であっても高放射能を有する
- 極めて硬い
という性質が燃料デブリの組成を特定するのに大きな障害をなっているのが現状です。
我々の研究室では、これらの性質を持つ燃料デブリをより安全に、迅速に特定するための装置を開発しています。
我々が開発している分光分析装置では、低電力、低真空(真空度が低いという意味です)で発生するグロー放電プラズマを使用しています。
これにより、分光分析装置全体として、より小さなものとすることが出来、原子炉のような人の手が介入しにくいエリアの物質であっても遠隔操作などによって分光分析を行うことが可能となります。
すでに、プラズマを用いた核種同定に関しては多くの研究が行われてきていますが、グロー放電を用いた研究は今のところ多くありません。
この装置では、分光分析の手法として、発光分光、吸収分光、CRDS分光という3つの手法を行うことが出来ます。
そもそも分光とは原子はそれぞれ固有の発光スペクトルを有しているため、それらを検出することによって核種同定を行うことを言います。
そのため、試料の量がある程度多くなければ、原子による光の吸収量(または放出量)が少なすぎて外部から検出することが出来なくなってしまいます。
しかし、上記の燃料デブリのような少量でも高放射能を有する物質においては多くの試料を導入することが難しいため、少量でも分光が行うことができる装置が必要となります。
この問題を解決するために生まれた手法がCRDS法です。
CRDS法では、2枚の向かい合わせに置いたミラー間でレーザーを何度も大福させることによって、光を原子が接する距離を稼ぎ、少ないサンプル量で原子による吸収(または発光)を検出できるようにしたものを言います。
我々の研究では、グロー放電プラズマを用いたCRDS法が可能な装置を開発することにより、安価で、迅速に、なおかつ遠距離操作で核種同定を可能とし、福島第一原子力発電所を含む、世界中の原子力発電所における原子炉解体に貢献したいと考えています。